2013年6月、Ibanez Official WEB チームにより、開発者インタビューを行いました。
完成までのエピソードから、開発者の思い入れまで、およそ1時間の取材から見えてきたES2の魅力を是非チェックしてみてください!

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開発者(以降「開」とする):これ完全なアナログじゃないんだよね。(笑)

インタビュアー(以降「イ」とする):えっ、そうなんですか!?

開:

回路だけの話をすると思いっきりDSPを通ってるから、完全無垢なアナログじゃないんだよね。

イ:

でも音はアナログ・ディレイならではというか、よく言う温かみのある音そのものですよね。

開:

そうそう。ディレイの回路にはBBD(Bucket Brigade Device)ICを使用してるから、 アナログらしい音の減衰とか劣化とかはまさしくアナログディレイなんだけど、フルアナログでは無いよ。

イ:なるほど。ところで、そもそも開発のきっかけは?

開:

最初にあったのは、まずディレイを作るということと、BBD ICを使おうってこと。それから、フィルターの処理なんかをDSPに任せることで小型化しようということ。

イ:

たったそれだけですか?

開:

たったそれだけ。(笑)

イ:

それにしては個性的というか、奇抜ですよね。見た目とか。

開:

そうでしょ?最初の試作機はコンセプト通りのタバコ大サイズで、あまりにも普通のディレイで面白くなくて。もっと変わったものにしたくて、行き着いた結論が、やっぱりまずはデザインでしょ!と。

イ:

ふむふむ。

開:



それで、せっかくBBD ICを使ったアナログディレイだから、イメージも同じように古臭い感じにしたくて、着想したのがシンセサイザーなんだけど。これを参考にデザインをネチネチ作っていったら、「黒い筐体に茶色い横板」っていう、なんだか見たことあるようなものが出来上がってしまって。

イ:

ワハハハ!

開:

これは問題だろうと言う事で(笑)   より個性を追求する意味も込めてシャーシをサーフグリーン系のカラーにして、横は濃い茶色のローズウッドにしたんだよね。あと!最初のサンプルにはスライドノブなんて無かったんだよね。

イ:

え!そうなんですか!

開:

そうそう。最初はDELAY TIMEに、MIX、FEEDBACK、MODULATIONのスイッチくらいで、もっとシンプルだったんだよ。

イ:

そのサンプルって今まだありますか?

開:

いや、あまりにもクダラナ過ぎて、もう捨てたよ。

イ:

残念です。(笑)

開:




まぁ、そんなこんなで、あれこれ考えたんだけど。デザインに一番影響を与えたのは、このDELAY TIMEのフェーダーだよね。最近のエフェクターで、このスライド式を堂々と採用したのって他に無いんじゃないかなと思う。これに至ったのも、やっぱりシンセサイザーなんだけど、昔のシンセってやたらに機能が多かったじゃない。で、最初は本当にもう悪ふざけみたいな感覚で採用してみたんだけど。結果的に、これって普通のコントロールより遥かに面白くなってさ。ほら、DJのクロスフェーダーとかも、スライド式でしょ?

イ:

確かに!

02

イ:

開発途中で大変なことはありましたか?

開:





社内で反対された事かな。OSCILLATIONのスイッチがマニアックすぎるとか、DEPTHの設定が深すぎるとか。でも、どうしても“この外観で汚い音を出す”っていう合わせ技がしたくて、ひとしきり押し通したよね。(笑)やっぱりエフェクターは、特にES2はアナログディレイだし、面白くないとさ。だから飛び道具的な要素は残したかったんだ。音を出しながら操作するのが楽しいから、特にそこは譲れなかったかな。その代わり、ウルサく使っても暴れすぎない様に、かなり工夫したね。

イ:

例えばどんなところですか?

開:

OSCILLATIONがONの時に、徐々に音が潰れるような変化を生む回路を通る設計にしてあったり。それがリミッター的な役割も果たしてるんだけど。そういう微妙なDSPの処理とかね。

イ:

確かにOSCILLATIONの機能はとても面白いですよね!使っている内にハマっていくというか、、

開:


そうそう。アナログディレイって、歪みのエフェクターとかと違って比較しにくくて。じゃあ何を基準に良し悪しとするかと言うと、ずっとイジっていたくなる感じ?というと、伝わるかな。もちろん基本的なスペックもあるんだけど、それ以上に使えば使うほど面白くなっていく事が重要だと思う。

イ:

なるほど。 ところで、アナログディレイとデジタルディレイは普通に聴き分けられるものなんでしょうか?

開:


僕は違うと感じるけど、音楽を自分で演奏しない人が聴いても区別が付かないかもしれないね。BBD ICを通ることによって音は確実に劣化するし、それによる独特の音色が生まれるから、それがアナログの良さだと思うし、手の込んでないデジタルディレイは音が綺麗すぎて、深みが無いからね。だからES2はDSPの処理でもBBD ICの良さが出るように設計してあるよ。

イ:

なるほど。

開:


けど、それ以上に、アナログかデジタルかっていう違いは例えばワインをワイングラスに入れて飲むか、ビールコップで飲むかっていう違いと同じだと思う。ビールコップで飲むより、ワイングラスで飲むほうが楽しめるでしょ。だからBBD ICを使っているかどうか、言い換えるとアナログかどうか、これって演奏する人の気持ちや演奏自体にも影響すると思う。

イ:

わかり易いですね~。他に、開発に際して困難だったことはありますか。

開:

そうだね、そもそもBBD ICを使うという事自体が大変だったかな。細かいことを言うと、BBD ICはフィードバックの量とか不安定な事が多いし個体差もあるから、それこそアナログの醍醐味でもあるんだけど、作る方としてはその為に考えなきゃいけない事が多いんだよ。

イ:

そうだったんですか。

開:

だから、どのメーカーでもアナログディレイというだけで開発を嫌がると思うよ。

イ:

それをして、BBD ICの使用を追及したのは?

開:

そりゃあ、ワインをワイングラスで飲ませたかったからでしょう。(笑)

02

イ:

ES2に対する何か特別な思い入れはありますか?

開:

思い入れ?無いはずないよね?(笑)

イ:

ですよね。(笑)

開:

さっき話したみたいな苦労も沢山あったし、周囲の反対を押し切った事もあって、より多くの人に受け入れられたら嬉しいかな。このエフェクターは正に、僕自身だしね。

イ:

と言うと?

開:



エフェクターを開発するのって、ほとんどギターを弾くのと同じ感覚で、自分が欲しい音を実現したいとか、こんな機能があったらとか。自分の感性を反映させたくなるんだよね。だから、ES2が否定されたら、僕自身を否定されたも同然と言うか。(笑)でもそう思いながらも、作ってる間は「もう全世界に世紀の駄作と呼ばれてもいいや」とも思ったけどね。世に出た今となっては、ES2を通して世界中のギタリストとコミュニケーションしてるような気持ちでさ。

イ:

確かに、エフェクターはキャラクターが出ますよね。自由度が高いですし。

開:

そうなんだよね。常々思うけど、エフェクターは存在そのものがアーティストの個性に繋がるというか。単なる道具じゃなくて、道具を使いこなして初めて価値を発揮するというか、、

イ:

わかります!

開:

そういう点でIbanezのエフェクターって昔から凄く面白くて、まだ僕が学生の頃から好きだったんだよね。トーンロックシリーズ(Ibanez廃番商品)のFZ7とか、、あとLF7とか!

イ:

あ~。(笑)

開:

Ibanezのエフェクターには、ああいう極みだったものがあって。そういうアティテュードを大切にしたいと思って作ったかな。ES2に関して言えば、思い入れは伝えきれないけど、とにかく面白いエフェクターだと思って沢山の人に使ってもらえたら嬉しいかな。